いまや、日本の飲食店で「人手不足」は深刻な問題であることは言うまでもありませんが、
今回は、人手不足とオペレーションについて触れてみたいと思います。
昨年より2~3店の会社でも、求人採用費に毎月数十万円投資して、未だなお人手が不足している会社も多いのではないでしょうか。
この人手不足について、日本の少子高齢化による労働人口の減少も一因にありますが、
人手不足の全ての要因がそうであるとは結論づけてしまう会社がもしあれば、
恐らく、その会社はこの先も人手不足に苦労することでしょう。
同じ居酒屋業態でも入店希望者が続出し、入店待ちの状態の会社もありますし、
同じコンビニでも求人応募数に大きな違いがあります。採用しても人が流出(離職)し続ける店舗、
採用したら中々離職しない店舗との違い。採用広告を大々的に出しても集まらない店舗、採用広告をさほど出さずして集まる店舗との違い。
同じ環境で、どうして人手不足の「違い」が生まれるのか、
一度、自店のオペレーション見直しを検討されては如何でしょうか。
<人手不足に直面した時に見直すべき「オペレーション」の視点>
1、給料がアップ出来る体質か!? / 少人数で利益が稼げるオペレーション
スタッフの頑張りが給与に反映される仕組みの前に、スタッフの頑張りが利益に直結するオペレーションが無いと単純に人件費率の上昇、利益の圧迫になるだけです。
「3年間働いているが時給が20円しか上がっていない・・・」「年間の昇給が、えっ、、、、これだけ・・・か。」 既存のスタッフは勿論ですが、その噂はSNS等の書き込みで拡散されます。スタッフの頑張りにより売上が増えた際、単に人員を増やしてしまうのではなく、少人数で回せるオペレーションをつくり、飲食店においては、人時生産性を5000円/時を超えないオペレーションでないと、1人あたりの給与を増やし続けるのは困難かと思います。(※人時生産性については前回のブログを参照下さい) 勿論、給与が労働の動機の全てではありませんが、労働の動機の一部として今後も続いていきます。
2、疲労負担・精神負担が軽減されるオペレーション
牛丼屋の●鍋膳のように、現場のスタッフに負担を強いる商品開発や、深夜帯の1人オペレーション(俗称ワンオペ)はよほど向いている人でなければ滅入ってしまう上記の少人数オペレーションと相反するようですが、調理や提供が複雑な商品であるならば、労働環境を工夫し、現場に過度な負担を強いないオペレーションの構築が必須です。たとえば、先日オペレーションをセルフからフルサービスに変更したカフェのスタッフの1時間あたりの歩数を調べたところ、
Aエリアの配膳(ランナー)スタッフの平均が 2801歩/時
Cエリアの配膳(ランナー)スタッフの平均が 1048歩/時
と大きな違いがありました。
全国チェーンの餃子業態で約1500~1700歩/時、牛丼業態で約700~800歩/時、コンビニ大手で約1300歩/時と比べても、Aエリアのスタッフへどれだけの負担を強いているか、そして同じ時給のCエリアのスタッフとの倍近く働いている環境にも問題があり、人離れ・離職に繋がる要因を生んでいます。(チェーン店の歩数に関するデータの出典は、日経トップリーダー2014年9月号より抜粋しております)ここですべきは、導線の中間地点にステーション(下げ膳・備品置き場)を用意し、歩数を短縮する、オーダーを通すオペレーションの見直しを行い、スタッフの労働負担を一日でも早く軽減することです。
3、働き甲斐に繋がるオペレーション
東京ディズニーランドの清掃員(カストーディアルキャスト)のお客様を喜ばせるパフォーマンスなどは、そこで働くスタッフの働き甲斐に繋がっている等の話は、有名な話ですが、大手ではなくとも、個店レベルでも「働き甲斐に繋がるオペレーション」をつくることで、人材の流出防止、採用促進につなげることは可能です。
あえて、お店側で「人に喜ばれる」「人から注目される」「人を楽しませる」オペレーションを意図的に設計しておくことで、スタッフのやりがいを感じて貰うことも可能です。「スタッフが自発的にやらなければ意味がない」のも一理ありますが、「人は動機づけされて動く」こともあれば、「動くことで動機づけされる」こともあります。採用難の今の日本の飲食店事情を考えるならば、自ら動機づけ出来る人材を採用することは非常に困難で、「動くことで動機づけされるオペレーション」を考えるべきだと思います。
以上、人手不足をオペレーションの視点から参考にしてもらえればと思います。