一流企業から学ぶ アルバイトの教育 マクドナルド編


全国14万人のアルバイトが共有する研修カリキュラム
マクドナルドがどんどん業績を落としている。年末にかけて多くの店舗が閉店し、ネットでも話題になっていました。 しかし、今現在でも外食企業においては、店舗数3,700、クルーの数は14万人とすば抜けています。 マクドナルドの1店舗(24時間営業)のスタッフの数は、社員3名、クルー40〜50名とクルーの数が大部分を占めています。マクドナルドのお店はほとんど、クルーが回しているのが現状です。 ではなぜこのようなことができているのか。
トレーナーというランク制度の導入
マクドナルドでは熟練したアルバイトにトレーナーというランクを用意しています。トレーナーは他のアルバイトにトレーニングを行うことが主な役割です。仕事の正しい手順を示し、各個人が力を発揮できるようにサポートします。新人全員にトレーナーが付き、仕事でわからないことがあれば手取り足取り教えるシステムです。そのトレーナーになるためのプログラムまで用意されいます。そのプログラムでは新人が叱られて辞めてしまわないように、新人さんの一挙手一投足に目を配り、何かが上達したり、仕事で良い働きをしたりしたら、すぐに褒めることなどを習います。クルートレーナーには新人クルーの一挙手一投足に目を配り、何かが上達したり仕事上の気働きを発揮したりしたら、すぐに褒めることが奨励されている。同社ではこれを「即時フィードバック」と呼んでいる。
「認知的徒弟制」の導入
「認知的徒弟制」とは、伝統的な徒弟制の職業技術訓練をモデルとして、いわゆる見習い修行の学習過程を認知的に理論化した学習方法のことです。アメリカの認知学者ジョン・S・ブラウンやアラン・コリンズらによって提唱されました。 認知的徒弟制は、 1.弟子が親方の仕事を見て学ぶ(モデリング) 2.親方が手取り足取りで弟子を教える(コーチング) 3.できそうな仕事を弟子にやらせてみて、できそうもない仕事は親方が支援して完成させる(スキャフォルディング) 4.親方が手を引いて自立を促す(フェーデング) という4段階に分かれていて、これらのステップを踏むことで効果的・効率的に技能の継承が進むと考えられています。 単に知識を知識として詰め込むだけでは、自ら考えて行動する人材はつくれません。認知的徒弟制とは、実践を通した学習によって、知識を実際の状況に即した形で獲得するための手法だといえるでしょう。
「何をやるのか」だけでなく「なぜやるのか」
次に、マニュアルによる組織化。 組織化とは、クルーに組織特有の文化やルールを教え込み、組織の一員にさせることです。 企業には必ずクレドがあります。経営理念や行動指針、ミッションと呼ばれることもあり、その企業が大切にしている信条を言葉にまとめたものです。マクドナルドのクレドは、「I’m lovin’it」〈お気に入りの食事の場・お気に入りのスタイル〉。それを実現するために重視されているのがQSC&V(質の高い商品とサービス、それに清潔さが価値を生み出す)であり、入社が決まるとその中身を徹底的に教えられます。 たとえば「ハンバーガーをつくる際、ケチャップはバンズの真ん中につけよ」と教わります。「どこから食べ始めても同じ味がするように」という配慮からです。それがマクドナルドのハンバーガーの特徴であり、お客様もそれを望んでいる。「I’m lovin’it」がそれによって実現します。 マクドナルドのマニュアルには、あらゆる仕事に関して「何を、どんな手順でやればいいのか」だけでなく、「なぜそのやり方が最善なのか」という行動の背景や理念も説明されています。その結果、マクドナルドが大切にしているルールをクルーが自然に会得していく。「何々をせよ」と指示したら、必ずそうすることの理由も伝える。「これがルールです」「これは禁止されています」と頭ごなしに言うより、学習効果はずっと高いはずです。 これは、クレドを頭に浸透させながら必要なスキルを教えるには素晴らしい教え方です。 日々の仕事の中に若者を組織化する巧みな仕掛けが埋め込まれており、マクドナルドの人材育成の優れた点です。